首の痛み:機能解剖学的な視点からの深掘り
首の構造と機能
首は、頭蓋骨と体幹を繋ぐ重要な部位であり、複雑な構造をしています。頸椎と呼ばれる7つの椎骨が積み重なり、その間には椎間板が挟まっています。これらの椎骨と椎間板は、首の柔軟性を保ち、頭を支える役割を担っています。
頸椎には、脊髄が通っており、脳からの指令を身体の各部分へ伝え、感覚情報を脳へ伝える働きをしています。また、首には多くの筋肉が分布しており、頭の動きや姿勢を制御しています。
首の痛みの原因と機能解剖学の関係
首の痛みは、以下の機能解剖学的な要因が複雑に絡み合って発生することが多いです。
- 筋肉の過緊張 / 筋膜の軽度癒着: 長時間同じ姿勢を続けたり、ストレスを感じたりすることで、首周りの筋肉が過緊張状態になり、血流が悪化し、痛みを生じます。ほとんどの首の痛みの原因は筋肉の過緊張や筋膜の軽度癒着です。
過緊張や癒着が起こる事で、関節の動きの制限、神経の圧迫、姿勢の悪さに繋がっていきます。
筋膜リリースで深層組織から筋膜の癒着を開放していく事が効果的です。 - 関節の動き制限: 頸椎の関節が変形したり、周囲の組織が癒着したりすることで、関節の動きが制限され、痛みや違和感を感じます。
- 神経の圧迫: 頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症などにより、神経根が圧迫されると、痛みやしびれ、運動麻痺などの症状が現れます。
- 姿勢の悪さ: 猫背やストレートネックなど、悪い姿勢を長時間続けると、特定の筋肉に過度な負荷がかかり、痛みを引き起こします。
各筋肉の役割と痛みとの関連
- 後頭下筋群:頭のと首の付け根にある4つの小さな筋群で、位置感覚を脳に伝える固有受容器を豊富に含む、身体の中でも特に重要な筋群です。ここが硬くなることによって、目の奥の痛みなどを引き起こす場合があります。
- 僧帽筋(上部線維): 首から肩にかけて広がる大きな筋肉で、肩甲骨を上下させる動きや、頭を支える働きがあります。過緊張すると、肩こりや首こりの原因となります。
- 肩甲挙筋: 肩甲骨を上げる働きがあり、緊張すると肩こりや首の痛みを引き起こします。
- 半棘筋、板状筋:半棘筋は首の後ろ側の中心部に位置する筋肉で、板状筋はやや外側に位置する筋肉です。顎が上がった姿勢(ストレートネック)で短縮し、常に緊張状態に置かれ、血流障害が生じ、発痛物質が分泌されます。特に上を向いた時や左右に頭を回旋させたときに痛みを感じます。
- 胸鎖乳突筋: 耳の後ろから鎖骨にかけて走る筋肉で、頭を傾けたり回したりする時に働きます。緊張すると、頭痛や首の痛みを引き起こします。
- 深層頸屈筋群: 頸椎の前側に位置する深層の筋肉群で、頸椎の安定性を保つ働きがあります。この筋肉群が弱化すると、顎が上がった姿勢(ストレートネック)になり、首の痛みや姿勢が悪化する可能性があります。
全身のバランスと首の痛み
首の痛みは、単に首の局所的な問題だけでなく、全身のバランスが崩れていることが原因となるケースも少なくありません。特に、体幹と呼ばれる胴体の部分の安定性が、首の健康に大きく影響を与えます。
体幹の役割と首の痛み
- 体幹の安定性: 体幹(「インナーマッスルである横隔膜/骨盤底筋/腹横筋/多裂筋」と「腹筋群」)は、身体の中心であり、姿勢を保持し、動作の基盤となる重要な部分です。体幹が安定していれば、首や腰への負担を軽減することができます。特に肩甲骨のポジションは重要で、肩甲骨と背骨との距離が適切である場合、背筋が綺麗に真っすぐになります。しかし、注意点として、筋肉が硬く凝ってしまっている方が肩甲骨を内側に寄せて、無理に姿勢を「矯正」しようとすると、肩甲骨の内側が凝ってきたり、痛くなりますので、筋肉や筋膜の癒着を開放することが重要です。癒着が解放された後は、無理なく、いい姿勢になります。
- 連動性: 身体は、頭からつま先まで連動して機能しています。体幹が不安定になると、そのバランスを取ろうとして、首や肩、腰などに余計な力がかかり、痛みを引き起こすことがあります。
- 姿勢の悪化: 猫背や反り腰など、姿勢が悪くなると、体幹のバランスが崩れ、首に負担がかかりやすくなります。
体幹の不安定さが引き起こす首の痛み
- ストレートネック: 長時間スマホやパソコンを操作するなど、同じ姿勢を続けることで、首が前に傾き、ストレートネックになりやすいです。
- 肩こり: 体幹が不安定な状態が続くと、肩の筋肉が緊張し、肩こりを引き起こします。
- 頭痛: 首の筋肉が緊張することで、血行が悪くなり、頭痛が起こることがあります。
体幹機能を改善させる重要性
体幹の機能を改善させる事で、以下の効果が期待できます。
- 姿勢の改善: 姿勢を安定させ、猫背や反り腰などの改善に繋がります。
- 痛みの軽減: 首や肩、腰などの痛みを軽減することができます。
- パフォーマンス向上: スポーツや日常生活でのパフォーマンス向上に繋がります。
体幹の機能を改善させる為に
体幹機能の改善には、筋の過緊張や筋膜の癒着を開放するのが、一番効率的です。
筋トレのようなエクササイズの場合、「筋肉の過緊張/筋膜の癒着」がある部位は、力が出しづらくなるという特徴があります(筋出力の抑制)。
つまり、うまく力が出せない状態でエクササイズすることによって、代償‐かばう動作が無意識的に発動し、その他の部位へ悪影響を及ぼす可能性があります。
特に、体幹機能を改善させる為に、リリースが重要となるケースが多い筋肉はこれらです。(もちろん人によってどこに機能制限があるか違うので、しっかりと評価する事が大切になります。それは、僕らセラピスト/ロルファー™の仕事になります。)
その他、首の痛みと関連する要因
- ストレス: ストレスは筋肉の緊張を高め、血行不良を引き起こし、痛みを悪化させることがあります。
- 睡眠不足: 睡眠不足は、筋肉の回復を妨げ、痛みを悪化させることがあります。
- 栄養不足: 特定の栄養素が不足すると、筋肉の機能低下や骨の健康に悪影響を及ぼし、痛みを引き起こすことがあります。
治療における機能解剖学の重要性
機能解剖学の知識に基づいた治療を行うことで、より効果的に首の痛みを改善することができます。例えば、
- 痛みの原因となっている筋肉を特定し、ピンポイントで治療: 超音波画像診断装置などを用いて、痛みの原因となっている筋肉を特定し、その筋肉に対して治療を行うことで、効果的に痛みを改善することができます。
- 姿勢の改善指導: 姿勢の悪さが原因の場合は、正しい姿勢を指導し、筋肉のバランスを整えることで、痛みを予防・改善することができます。
- 運動療法: 機能制限を受けている部位の筋肉の過緊張や筋膜の癒着を開放した後、弱くなっている筋肉を強化したり、柔軟性を高めたりする運動療法を行うことで、機能回復を促し、再発予防にも繋がります。
まとめ
首の痛みは、様々な要因が複雑に絡み合って発生するものです。機能解剖学的な視点から、首の構造や筋肉の働きを理解することで、より深く首の痛みを理解し、適切な治療を行うことができます。
首の痛みも、首の局所的な問題だけでなく、全身のバランス、特に体幹の安定性と深く関連しています。脳で制御されている体幹機能を筋膜リリースを通して整える事で、首の痛みを改善することができます。
もし、慢性的な首の痛みでお困りの際は、症状が悪化して筋肉がカチコチになる前に、ご相談頂けると、簡単に改善出来ます^^
カチコチになってしまっているケースでもロルフィング10シリーズの3∼6か月以内には良くなりますので、お気軽にお問い合わせ下さいませ(^^♪